このレクチャーでは、収益性の高い動画広告がビジネスにもたらすインパクトについて海外のオンラインコースクリエイターであるJumpcutの例をもとに、解説します。Jumpcutは、今や世界一デジタルコンテンツを販売している企業と言っても過言ではありません。僕たちもベンチマークしています。
Jumpcutのたどってきた道を追体験しながら、動画広告のもたらすビジネスへのインパクトについて理解してください。Jumpcutの成功を追いかけるように、僕たちも動画広告に参入しました。2社の広告代理店と契約をしつつ、自分たちでもGoogle広告を回しています。動画広告に参入し僕たちのオンラインコース売上がどのように変わったかについてもお話ししましょう。
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収益性の高い動画広告を生み出すに至った6つのストーリー
ここからは6つのストーリーを紹介します。Jumpcutが広告を使ってこのビジネスを軌道に乗せるに至った背景を紹介します。KongとJesseはよくYouTubeの中で「動画広告をやらなければ今の僕たちはなかった」と発言しています。その真意は。それでは早速見ていきましょう。
ストーリー#1:最初のオンラインコースの立ち上げ
Jumpcutの創業者であるKongは過去10年間、バイラルビデオの制作に携わってきました。バイラルビデオとは、まるでウイルスのようにシェアされていく中毒性の高いコンテンツです。彼が作った動画の中でも何億回もの再生回数を記録しているものがあります。また彼が制作を手伝った動画を合わせると、合計の再生回数は10億回を超えます。
みてください、最近投稿された動画のタイトル。I Love Racists です。ベトナム系アメリカ人のKongは、いってしまえばアメリカで差別を受ける側の人間だったはずです。そのKongが「差別主義者、好きです」というんだから、反社会的と言わずになんと言えばいいでしょうか。チャンネス登録者数は250万人。
内容はデートのアドバイスから、いたずらの方法や慈善活動まで、さまざまなトピックを扱っています。彼は何百万人もの登録者を持つ複数のYouTubeチャンネルを立ち上げて成功させました。そして、その成功をもとにオンラインビジネスを立ち上げたのです。結果としてそのビジネスは、日本円に換算して20億円以上の売上を達成しています。
しかしほんの数年前まで、Kongたちのビジネス状況はあまり良いものではありませんでした。2016年、KongとJesseオンラインコースビジネスを立ち上げました。彼らがオンラインコースを立ち上げるに至ったのは、多くの友人が大学でビジネスを学んでいるにも関わらず、成果を上げられていなかったからです。しかも友人の多くは、多額の借金をして大学に通っていたそうです。Kongは結局、大学を中退しました。なぜなら大学の授業では、現実世界でビジネスを始め、運営する方法についてほとんど何も学べなかったと感じたからです。投資すべきお金を持っていながら、大学で何の成果も得られないまま終わる人をこれ以上増やしたくなかったのです。
ストーリー#2:小さなスタートと最初の成功
Kongたちはこの仕組みを変えることにしました。まずは、自分の時間と少ない自己資金を投じて小さなチームを雇い、そして2016年の半ばには世界最高峰のスタートアップアクセラレーターであるYCombinatorの支援に合格しました。スタートアップアクセラレーターとは、創業間もない企業を支援する組織のことですね。ちなみにYCombinatorは、AirbnbやDropbox、Doordashといった有名企業が事業を成長させ、投資を獲得するために利用した実績があります。
Kongたちの目標は、現在のビジネス教育のシステムを置き換えることでした。僕らは従来のビジネス学位取得のために、時間とお金を無駄にすることなく、ビジネスを成功させるための方法を教えることができるコースを作りたかったのです。YCombinatorの支援終了時には、さまざまな投資家からおよそ2億円の資金を調達することができました。そして画期的なオンラインビジネススクールを作るという目標を、早期に達成できたのです。
この資金のおかげで、彼らは商品の開発に全力を注ぐことができました。具体的にはオンラインコースを作成したり、学生向けのオンラインフォーラムを開設したり。ほかにもコースにブートキャンプと呼ばれる教育・訓練プログラムを組み込んだりもしました。これは、ビデオレクチャーを補完するためにワークシートなどで課題をつけたオンラインの学習環境です。このプログラムを作ったのは彼らにとって大きなことだったようです。
ストーリー#3:初期の成功に勘違いを起こしてしまったキッカケ
しかしその後、彼らは自分たちを誇大広告することに夢中になりすぎてしまいました。彼らと同じように成功しているスタートアップ企業を見てみると、利益が出ていなくても、何が何でも「成長すること」に集中している企業が多いことがわかりました。それを見てKongたちも、自分たちのビジネスの財務的な安全性を重視するのを辞めてしまったのです。成長を重視して結果を出すシリコンバレーの文化についていこうと考えたんですね。シリコンバレーのやり方でみんなうまくいっているのなら、自分たちがあえて違うことをする必要はないと考えたのでしょう。
その考えに基づいて、従業員新たに4人抱えることになりました。公平に見ても彼らは当時、他のスタートアップ企業より稼いでいたと言われています。YouTubeの視聴者もたくさんいましたし、ソーシャルメディアで大きな影響力を持つ友人たちが、自分のチャンネルを使って彼らの活動を宣伝してくれ、月に500万円以上は稼げていたようです。
しかし問題は、できるだけ早く成長したいというシリコンバレーのマインドセットにより、そこで上げた利益のすべてをすぐに再投資で使ってしまったことです。僕らは純粋に「成功するスタートアップとはそういうものだ」と考えていました。そしてそれは方針としては間違っていませんでした。UberやLyftのような企業も利益が出るまで時間が掛かりましたし、Airbnbもつい最近利益を出し始めたばかりです。だから、そういうやり方が間違いないと考えたのです。
確かに僕も振り返ってみれば、彼らと同じことをやった経験があります。僕が提供している「いしこん」というコンサルティングサービスで、毎月のように成約があった年には、僕らはその利益をクラウドワーカーさんたちに対して再投資して、一気にバックオフィス業務を整えました。今思えば、その時の行動が今の僕らの「短時間だけ働く」というワークスタイルを支えてくれています。
そのおかげあって、デン・ハーグのガラガラの海でサーフィンをしていても、家で妻の作ったインドカレーをすすっていても、空腹でグズる子供たちを乗せてパーキングスポットを探して車でさまよっている時も、僕のサポートデスクに届くメールは担当者によって適切に処理されています。ブログ記事もライターさんたちがどんどん記事を追加してくれます。
僕らは、たまたまうまくいきました。再投資によってバックオフィスをしっかり整えることができ、僕らはもっと大事なことに時間を使いながらも、定期的にコンテンツを作っていく余裕が生まれ、ビジネスがより良い循環で周っていきました。でも、こういった再投資もちゃんと成果を見ながら、少しずつやっていかないといけません。一気にお金だけ使えばといいという発想だと、せっかくの資金の余裕もインパクトの大きなことに使えずに終わってしまいます。
何よりあまりにも多くの会社とコンサルティング契約を結んだことによって、1日20社という信じられないスケジュールに一時期になりました。週4時間しか働かないを掲げている身なのに、あまりの過労に倒れてしまうほどでした。今は、コンサルティングの値段を上げて本当に儲かっている10社とだけお付き合いをさせていただいております。それでもコンサルティングはいつも満席で、ウェイトリストで多くの企業が順番を待っている状態です。
ストーリー#4:コストがかかりすぎた結果、従業員を解雇した
Kongたちにとっても、この利益をほとんど再投資する方法にはいくつかの素晴らしい利点がありました。それはどんどん良い製品を開発でき、彼らのやることを愛してくれる熱心なファンをたくさん得られたことです。しかしこれには大きなコストがかかっていました。約1年後、共同出資者のピーターが僕のところに突然来たんです。何事かと思ったら、「このままのペースでいくと10カ月後には資金が尽きてしまう」と切り出します。
Kongたちはようやく現実を目の当たりにしました。数週間どうすべきかチームで議論しましたが、最終的には生き延びるため、ビジネスをシンプルにすることを決断しました。つまりチームとオペレーションを凝縮し、コストを削減するしかないと悟ったのです。
当時22人の従業員がいましたが、そのうちの半分を解雇しなければなりませんでした。それはこれまでに経験したことのないほど、大変なことでした。なぜなら優秀な人材に「僕をCEOとして信頼してください」「一緒に世界を変えましょう」と言っておきながら、1年後に彼らの目を見て「解雇します」と言わなければならなかったからです。当時は打ちのめされるような気分だったでしょう。しかも、彼らは自分のせいで仕事を失ったわけではありません。失敗したのはビジネスを運営するKongたちの方でした。
半数の従業員を解雇したというショックが薄れたころ、彼らは利益を上げるために何をすべきか考え直しました。その時、毎月1000万円前後の赤字を出していたので、資金が尽きる前に新しい策を打ちたかったのです。
ストーリー#5:すぐに3つの選択肢から選ぶ必要があった
当時の彼らには、3つの選択肢しかありませんでした。1つ目は最も明白なもので、どうすれば利益を出せるかを考えることです。しかし彼らはすでにできる限りのコストを削減していましたが、それでもまだ赤字が続いていました。
2つ目の選択肢は、新たな投資家から資金を調達することです。しかしご存じのように、Jumpcutの財務状況は決して自信に満ちたものではありませんでした。投資家もお金を投資する以上、回収の見込みがないとお金は渡せませんよね。
3つ目の選択肢は冗談ではなく、独自の暗号通貨「Jumpcoin」を始めることでした。Jumpcutを厳しく批判する前に当時、暗号通貨はシリコンバレーで大流行していたことを思い出してください。
当時のシリコンバレーで暗号通貨は大流行しており、初期投資で数十億円以上を稼いでいる人々がいました。しかし彼らにとって暗号通貨はただのお金儲けの道具に見えてしまいました。最初の目的から考えると、それは彼らが望むビジネスではなかったのです。なので、すぐに選択肢から消しました。僕はこのストーリーを彼らの出演しているPodcastで聴いた時、失礼ながら笑ってしまいました。一方で、ishicoinを発行しようかなとふと思いました。冗談です。
ストーリー#6:これまでの経験を総動員して成功へつなげた
Kongたちが新たな投資家を得られる可能性はゼロだったので、残された選択肢は、自分たちだけで収益を上げる方法を考えることでした。そこで目をつけたのが広告です。当時、彼らはFacebookで小さな広告を出していましたが、それほど真剣には取り組んでいませんでした。当時は自分たちが何をしているのか、本当の意味ではわかっていなかったのです。だから広告の内容も非常にベーシックなものでした。
その広告からの収入はせいぜい月に300万円程度で、広告費を差し引いても利益は100万ほどにしかなりません。多そうに聞こえますがそれでも彼らのチームを養っていくには、あまりにも心細い金額です。
しかし少なくともある程度の成功を収めていたので、彼はFacebook広告を次のレベルに引き上げるために何ができるのかを考えました。Kongはまず、これまでの経験をこの新しい問題にどう応用できるかを自問したんですね。
先に述べたように、彼はすでにバイラルビデオのクリエイターとして成功していました。そのビジネスの前には、約5年間かけて何千本ものYouTube動画を制作した経験もあります。複数のチャンネルを立ち上げ、10億回以上の再生回数を記録し、400万人以上の購読者を獲得していました。
つまり、バイラルコンテンツを作るのは得意だったので、そのスキルを活かして本格的な収益につながる動画広告を制作しました。そして、そこからの広告収益は彼らを再びミリオネアへと押し上げてくれたのです。
僕も動画広告を作る際に、これまで10年間オンラインコースを作ってきてカメラの前に立っていた経験が活きました。良い広告文が出来たらパッと撮影できる環境もノウハウも蓄積できていたからです。でも、もしあなたがカメラの前で話すことに不慣れでも大丈夫です。あなたが出なくても動画広告は作れます。演者を立てたり、ナレーターを雇って後からVyondというアプリでアニメーションを付けてもらったり、方法は沢山あります。
ちなみに僕たちは毎月400万円近くを広告に突っ込み、800万円近くの売上を広告経由だけで計上しています。つまり、100円入れたら200円が出てくる仕組みを動画広告だけで達成したということです。特に英語圏の広告とは違い、日本はライバルが弱いので、いいクリエイティブが完成したらCPAを抑えつつ顧客一人当たりの価値を最大することが容易に可能です。
まとめ:動画広告のインパクトは予想よりも大きい
動画広告はビジネスに大きなインパクトを与えてくれます。ブログ経由のオーガニック集客と違い、うまくチューニングして広告出稿すればオーガニックよりも遥かに速いスピードでお客さんを集めてくれます。ここまで説明した通り、Kongたちは非常に厳しい状況をくぐり抜けてきました。でもあなたはこんな苦労をする必要はありません。僕らが動画広告の公式を作ったので、 あなたはその通りに 動画広告を作ってください。
別のレクチャーで僕らが動画広告づくりをする中で気づいたこと、そしてそれらを1つ1つ拾い集めてフレームワークのようにした公式を解説しています、探して視聴してみてください。それではまたお会いしましょう。